前回は、人生において良い人間関係を持つ人は長生きしたり幸福感が高いという研究を紹介しました。次に、職場における人間関係について考えてみましょう。
まず、ひとつ質問させてください。
「あなたは職場に親友がいますか?」
実はこれ、従業員エンゲージメント調査で有名なギャラップ社が、30年間行ってきた質問の一つなんです。そして面白いことに、最もクライアントの間で物議を醸した質問とのこと。
実際、仕事とプライベートを分けて考えるタイプの管理職からは、この質問に意味があるのかと反発があったようです。業務に関係ない雑談をしたり、職場で友情を育んだりするのは、生産性に関係ないだろう。いやむしろ悪影響なのではないかと。
しかしギャラップ社の調査結果によると、実態は真逆でした。「職場に親友がいる」と答えた社員のほうが、そうでない社員よりも仕事への努力を惜しまない傾向が強かったのです。
特に女性において差が顕著で、親友がいるかいないかで、エンゲージメント率が2倍以上の差がありました。
なぜ女性なのか、という点については、女性のほうが男性よりも「社会的側面を働く目的」にしている傾向が高いためと解釈できます。
しかし男女関係なく、職場に信頼できる友人が一人でもいた方が一緒に切磋琢磨したり心の支えになったりするだろうことは想像がつきます。
さらに、職場における親友の存在は、コロナウィルスによるパンデミック以降、益々重要になってきているとギャラップ社は主張しています。(2022年)
例えば、「自分の組織は働くのに素晴らしい職場だとオススメできるか」という質問に対して、親友がいる従業員の方がポジティブな回答をしています。
このように職場において良好な人間関係があれば、それだけでエンゲージメントを高め、離職の可能性を下げる可能性があります。
「仕事とプライベートの付き合い方は分ける」という考え方もありますが、職場に友人を持つことの効果も案外軽視はできません。
次は、またネットワークの話に戻り、チームの結束とエンゲージメントの関係について述べます。
→次へ(⑪チームの結束とエンゲージメント)
参考文献
- A. MANN (2018). Why We Need Best Friends at Work, article in GALLUP.
- A. Patel & S. Plowman (2022). The Increasing Importance of a Best Friend at Work, article in GALLUP.
【目次】シリーズ「ソーシャルネットワーク研究と職場のハピネス」