⑩「職場に親友はいますか?」エンゲージメントとの関係

ソーシャルネットワーク研究と職場のハピネス⑩

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前回は、人生において良い人間関係を持つ人は長生きしたり幸福感が高いという研究を紹介しました。次に、職場における人間関係について考えてみましょう。
 
まず、ひとつ質問させてください。
 
「あなたは職場に親友がいますか?」
 
実はこれ、従業員エンゲージメント調査で有名なギャラップ社が、30年間行ってきた質問の一つなんです。そして面白いことに、最もクライアントの間で物議を醸した質問とのこと。
 
実際、仕事とプライベートを分けて考えるタイプの管理職からは、この質問に意味があるのかと反発があったようです。業務に関係ない雑談をしたり、職場で友情を育んだりするのは、生産性に関係ないだろう。いやむしろ悪影響なのではないかと。
 
しかしギャラップ社の調査結果によると、実態は真逆でした。「職場に親友がいる」と答えた社員のほうが、そうでない社員よりも仕事への努力を惜しまない傾向が強かったのです。
特に女性において差が顕著で、親友がいるかいないかで、エンゲージメント率が2倍以上の差がありました。

なぜ女性なのか、という点については、女性のほうが男性よりも「社会的側面を働く目的」にしている傾向が高いためと解釈できます。
しかし男女関係なく、職場に信頼できる友人が一人でもいた方が一緒に切磋琢磨したり心の支えになったりするだろうことは想像がつきます。

さらに、職場における親友の存在は、コロナウィルスによるパンデミック以降、益々重要になってきているとギャラップ社は主張しています。(2022年)

例えば、「自分の組織は働くのに素晴らしい職場だとオススメできるか」という質問に対して、親友がいる従業員の方がポジティブな回答をしています。

このように職場において良好な人間関係があれば、それだけでエンゲージメントを高め、離職の可能性を下げる可能性があります。
「仕事とプライベートの付き合い方は分ける」という考え方もありますが、職場に友人を持つことの効果も案外軽視はできません。

次は、またネットワークの話に戻り、チームの結束とエンゲージメントの関係について述べます。
→次へ(⑪チームの結束とエンゲージメント)

参考文献

  • A. MANN (2018). Why We Need Best Friends at Work, article in GALLUP.
  • A. Patel & S. Plowman (2022). The Increasing Importance of a Best Friend at Work, article in GALLUP.

この記事の執筆者

太田雄貴

(株)ハピネスプラネット

ヒューマンデータ
サイエンティスト

2017年東京工業大学大学院総合理工学研究科博士前期課程修了。同年、(株)日立製作所入社。研究開発グループにて、公共系分野における機械学習や数理最適化の技術を活用した予測・効率化AIシステムの研究開発に従事。2020年に株式会社ハピネスプラネットに創業当初より参画。従業員の生産性・メンタルウェルビーイングの改善に関する実証実験を推進し、それ以外にも新規サービス企画、システム・ソフトウェア開発、アルゴリズム設計、特許出願、講演活動など、多岐にわたる業務に日々奮闘中。趣味は自然を楽しむアウトドア。

辻聡美

(株)ハピネスプラネット

チーフアーキテクト

京都大学大学院情報学研究科博士前期課程了。(株)日立製作所入社後、研究開発グループ基礎研究所にて人間行動データの応用に関する研究に従事し、ウェアラブルセンサを用いた50組織2000名以上の職場コミュニケーションの計測と分析、マネジメント改善施策の実行に携わる。2020年の設立当初より株式会社ハピネスプラネットに参画。発明協会平成26年度関東地方発明賞発明奨励賞、第64回オーム社主催公益財団法人電気科学技術奨励会電気科学技術奨励賞受賞他。趣味は読書と旅行とDIY。

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