前回は職場のエンゲージメントにおいて、友人の存在が重要という話を紹介しました。では、会社が従業員に「友達をつくれ」と強制すべきかというと、決してそうではありません。
友人関係というのは本来自然に発展されるべきです。
むしろ、友人関係が自然と育つような、土台となる職場風土を根付かせることが本質的に重要となってきます。
ここではもう少し、「仕事上のチームの人間関係」という観点で、エンゲージメントとの関係を見ていきましょう。
2019年に実施されたエンゲージメント調査によって、日本を含む世界では高エンゲージメントの従業員はわずか16%しかいないことが分かっています。
そこでエンゲージメントに個人差が生じる最大の要因が何なのか突き止めようと調査した研究があります。
この研究の結果、エンゲージメントに最も影響するのは「自分がチームの一員である」という感覚であることが判明しました。
実際、「私はチームの一員である」と回答した人のグループはそうでない人より、2倍以上高エンゲージメント従業員の割合が高いという結果になりました。
ここで重要なのは「感覚」だという点。
つまり、形式上チームに所属しているかどうかではなく、チームの同僚と協力し合っているという「一体感」や、自分はこの部分でチームの役に立っているというような「貢献感」を持っているということです。
つまり、チームの同僚と良好な関係性を築いているかどうかが、組織への愛着や仕事への熱意において一番影響が大きいのです。
ただしここで気を付けたいのは、実態のチームというのは組織図に載っていないことが多いということです。
実際に現場で行われている仕事は、横断的に人が集められたプロジェクトであったり、短期間だけ形成されるチームによるものも多くあります。
そして、こういった実態のチームの存在を把握しているのは人事部門ではなくチームリーダーなので、 「一体感・貢献感」の醸成のためにはリーダーの果たす役割が大きいと言えます。
リーダーは、メンバーに仕事上の期待を明確に伝えたり、長所を活かす機会を毎日作ってあげること、同僚との連携を助けてあげることもリーダーの役目だと言えます。
では次に、メンタルヘルスとの関係について見てみましょう。
→次へ(⑫職場の結束とメンタルヘルス:あなたの周りの三角形)
参考文献
- M. Buckingham & A. Goodall (2019). The Power of Hidden Teams.
【目次】シリーズ「ソーシャルネットワーク研究と職場のハピネス」