⑪チームの結束とエンゲージメント

ソーシャルネットワーク研究と職場のハピネス⑪

XLineFacebook

前回は職場のエンゲージメントにおいて、友人の存在が重要という話を紹介しました。では、会社が従業員に「友達をつくれ」と強制すべきかというと、決してそうではありません。
友人関係というのは本来自然に発展されるべきです。
むしろ、友人関係が自然と育つような、土台となる職場風土を根付かせることが本質的に重要となってきます。
ここではもう少し、「仕事上のチームの人間関係」という観点で、エンゲージメントとの関係を見ていきましょう。

2019年に実施されたエンゲージメント調査によって、日本を含む世界では高エンゲージメントの従業員はわずか16%しかいないことが分かっています。
そこでエンゲージメントに個人差が生じる最大の要因が何なのか突き止めようと調査した研究があります。

この研究の結果、エンゲージメントに最も影響するのは「自分がチームの一員である」という感覚であることが判明しました。
実際、「私はチームの一員である」と回答した人のグループはそうでない人より、2倍以上高エンゲージメント従業員の割合が高いという結果になりました。

ここで重要なのは「感覚」だという点。
つまり、形式上チームに所属しているかどうかではなく、チームの同僚と協力し合っているという「一体感」や、自分はこの部分でチームの役に立っているというような「貢献感」を持っているということです。

つまり、チームの同僚と良好な関係性を築いているかどうかが、組織への愛着や仕事への熱意において一番影響が大きいのです。

ただしここで気を付けたいのは、実態のチームというのは組織図に載っていないことが多いということです。

実際に現場で行われている仕事は、横断的に人が集められたプロジェクトであったり、短期間だけ形成されるチームによるものも多くあります。
そして、こういった実態のチームの存在を把握しているのは人事部門ではなくチームリーダーなので、 「一体感・貢献感」の醸成のためにはリーダーの果たす役割が大きいと言えます。

リーダーは、メンバーに仕事上の期待を明確に伝えたり、長所を活かす機会を毎日作ってあげること、同僚との連携を助けてあげることもリーダーの役目だと言えます。

では次に、メンタルヘルスとの関係について見てみましょう。
→次へ(⑫職場の結束とメンタルヘルス:あなたの周りの三角形)

参考文献

  • M. Buckingham & A. Goodall (2019). The Power of Hidden Teams.

この記事の執筆者

太田雄貴

(株)ハピネスプラネット

ヒューマンデータ
サイエンティスト

2017年東京工業大学大学院総合理工学研究科博士前期課程修了。同年、(株)日立製作所入社。研究開発グループにて、公共系分野における機械学習や数理最適化の技術を活用した予測・効率化AIシステムの研究開発に従事。2020年に株式会社ハピネスプラネットに創業当初より参画。従業員の生産性・メンタルウェルビーイングの改善に関する実証実験を推進し、それ以外にも新規サービス企画、システム・ソフトウェア開発、アルゴリズム設計、特許出願、講演活動など、多岐にわたる業務に日々奮闘中。趣味は自然を楽しむアウトドア。

辻聡美

(株)ハピネスプラネット

チーフアーキテクト

京都大学大学院情報学研究科博士前期課程了。(株)日立製作所入社後、研究開発グループ基礎研究所にて人間行動データの応用に関する研究に従事し、ウェアラブルセンサを用いた50組織2000名以上の職場コミュニケーションの計測と分析、マネジメント改善施策の実行に携わる。2020年の設立当初より株式会社ハピネスプラネットに参画。発明協会平成26年度関東地方発明賞発明奨励賞、第64回オーム社主催公益財団法人電気科学技術奨励会電気科学技術奨励賞受賞他。趣味は読書と旅行とDIY。

こちらの記事もおすすめです