①ウェルビーイング・生産性向上に欠かせない「社会的つながり」

ソーシャルネットワーク研究と職場のハピネス①

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なぜ人は集団で暮らすのでしょうか?
一人で暮らすより力を合わせた方が得られるものが大きいからのはずです。
 
企業においても、「人財」と呼ばれるように従業員が最大の力の源であり、従業員が力を発揮できるように、経営戦略や人材育成、ダイバーシティなど多くの取り組みがなされています。

これらのすべてに関連する要素のひとつが「社会的つながり」です。
社会的つながりとは、簡単に言ってしまうと人間関係です。
人は周りの人から多かれ少なかれ影響を受けて暮らしています。
 
誰と誰がつながっているか、どのような関係性なのか。
こういった社会的つながりが会社の組織や従業員にどのような影響をもたらすのか、この一連の記事で学術研究や事例を交えてご紹介します。
 
社会的つながりの研究を知る前に、先に知っておいていただきたいキーワードがあります。それは、社会資本です。

社会資本(Social Capital)・・・ 「物的資本」、「人的資本」に続く、第三の資本 

  • 「人と人とが社会的につながり合うと、メリットが生まれる」という概念
  • 「個人だけでなく、集団全体で利用できる資本」

簡単に言うと、「人と人とが社会的につながり合うことで、様々なメリットが生まれる」という概念です。個人だけでなく、集団全体が持っている資本です。これは、 「物的資本」、「人的資本」に続く第3の資本と呼ばれたりもします。
 
人的資本は従業員の人数や、彼ら/彼女らが持つスキルに注目するものですが、社会資本はその相乗効果に注目するものです。
 
野球に例えると、4番バッターとして優秀な人だけを9人集めても、強いチームになるとは限りません。足の速い人、肩の強い人、リーダーシップのある人、温厚な人、ユーモアのある人など多様な人が集まり、うまく相乗効果が働くと4番バッターばかりのチームよりも強くなる可能性があります。
 
その「相乗効果」が社会資本です。
しかし相乗効果とは何なのかどのような条件で表れるのか、非常にあいまいでつかみどころがありませんよね。
 
そこで、人がどのようにつながるとどのような現象が起こるのかを抽象化して探求するのが「ソーシャルネットワーク研究」です。
これは、個人の資質ではなく、つながり方の構造に注目する学問です。

ソーシャルネットワーク研究:つながり方の構造に注目する学問
  → どのように人がつながっている時に、どんな現象が起こるか?

この知見を活用することで、社会資本の見方が整理でき、組織の力を引き出すための人事戦略も検討がしやすくなるでしょう。

→次へ(② 人の「つながり方」が価値を生む(1:橋渡し型))

この記事の執筆者

太田雄貴

(株)ハピネスプラネット

ヒューマンデータ
サイエンティスト

2017年東京工業大学大学院総合理工学研究科博士前期課程修了。同年、(株)日立製作所入社。研究開発グループにて、公共系分野における機械学習や数理最適化の技術を活用した予測・効率化AIシステムの研究開発に従事。2020年に株式会社ハピネスプラネットに創業当初より参画。従業員の生産性・メンタルウェルビーイングの改善に関する実証実験を推進し、それ以外にも新規サービス企画、システム・ソフトウェア開発、アルゴリズム設計、特許出願、講演活動など、多岐にわたる業務に日々奮闘中。趣味は自然を楽しむアウトドア。

辻聡美

(株)ハピネスプラネット

チーフアーキテクト

京都大学大学院情報学研究科博士前期課程了。(株)日立製作所入社後、研究開発グループ基礎研究所にて人間行動データの応用に関する研究に従事し、ウェアラブルセンサを用いた50組織2000名以上の職場コミュニケーションの計測と分析、マネジメント改善施策の実行に携わる。2020年の設立当初より株式会社ハピネスプラネットに参画。発明協会平成26年度関東地方発明賞発明奨励賞、第64回オーム社主催公益財団法人電気科学技術奨励会電気科学技術奨励賞受賞他。趣味は読書と旅行とDIY。

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