③人の「つながり方」が価値を生む(2:集団間の橋渡し)

ソーシャルネットワーク研究と職場のハピネス③

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前回は最小の集団、つまり3人における橋渡し構造について述べました。
次に、異なる集団の間で<橋渡し>する例について考えましょう。

この図は2つの集団①と集団②の間をAさんとCさんがつないでいます。
AさんはBさんと同じ集団に所属しつつ、異なる集団のCさんとも繋がっているという状態です。

基本的に、同じ集団内では同質の情報がグルグル流れていると考えられます。
そのため、集団①が新しい別種の情報を得るためには、このAさんとCさんの間の橋を通る必要があります。

つまり、異なるタイプの集団間で<橋渡し>となることは、「新しい情報やアイデア」が手に入る可能性が高くなります。一つの集団の中だけにいると、同じ情報ばかりに触れるので視野が狭くなるため、異なる集団に橋渡しする人が集団に価値をもたらすということができます。

そして橋渡しによって得られる「新しい情報・アイデア」は、組織にイノベーションをもたらす可能性があります。なぜなら、新しいアイデアは多くの場合既存のアイデア同士の組み合わせから生まれるからです。

これについても様々な実証がされています。

<橋渡し>型のつながりは、組織のイノベーションの創発に重要

  • ゲーム業界において、異質なコミュニティとの<橋渡し>がある開発者の方が、創造的なゲームを開発 (Vaan 2015)
  • 社外の知識を重視した<橋渡し>を多くもつ従業員ほど、特許に関するイノベーション創出が多い (Tortriello 2015)

つまり、いつも同じような人とばかり会話するのでなく、異なる世界の人と付き合うことも大切ということです。

以上が橋渡し型のメリットです。次は結束型をみていきましょう。

→次へ(④人の「つながり方」が価値を生む(3:結束型))

参考文献

  • M. De Vaan, D. Stark & B. Vedres (2015). Game changer: The topology of creativity. American Journal of Sociology, 120(4), 1144-1194.
  • M. Tortoriello (2015). The social underpinnings of absorptive capacity: The moderating effects of structural holes on innovation generation based on external knowledge. Strategic Management Journal, 36(4), 586-597.

この記事の執筆者

太田雄貴

(株)ハピネスプラネット

ヒューマンデータ
サイエンティスト

2017年東京工業大学大学院総合理工学研究科博士前期課程修了。同年、(株)日立製作所入社。研究開発グループにて、公共系分野における機械学習や数理最適化の技術を活用した予測・効率化AIシステムの研究開発に従事。2020年に株式会社ハピネスプラネットに創業当初より参画。従業員の生産性・メンタルウェルビーイングの改善に関する実証実験を推進し、それ以外にも新規サービス企画、システム・ソフトウェア開発、アルゴリズム設計、特許出願、講演活動など、多岐にわたる業務に日々奮闘中。趣味は自然を楽しむアウトドア。

辻聡美

(株)ハピネスプラネット

チーフアーキテクト

京都大学大学院情報学研究科博士前期課程了。(株)日立製作所入社後、研究開発グループ基礎研究所にて人間行動データの応用に関する研究に従事し、ウェアラブルセンサを用いた50組織2000名以上の職場コミュニケーションの計測と分析、マネジメント改善施策の実行に携わる。2020年の設立当初より株式会社ハピネスプラネットに参画。発明協会平成26年度関東地方発明賞発明奨励賞、第64回オーム社主催公益財団法人電気科学技術奨励会電気科学技術奨励賞受賞他。趣味は読書と旅行とDIY。