前回までは、つながりがもたらす生産性・創造性などの組織のメリットについて紹介してきました。しかし、当事者である従業員自身にとって、どのようなつながりの中にいると嬉しいのでしょうか?
ソーシャルネットワーク研究の変遷
- 従来:個人や組織の「生産性・創造性・パフォーマンス」といったメリットに焦点
- 近年:「仕事への熱意・心身の健康」といった心に関係する観点にも着眼
⇒エンゲージメントやウエルビーイング、メンタルヘルス改善のヒント
近年のソーシャルネットワーク研究は、「仕事への熱意・心身の健康」といった心に関係する観点にも注目するようになってきています。
これらの研究には、日本でも関心が高まってきている、エンゲージメントやウエルビーイング、メンタルヘルス改善のためのヒントがありそうです。
研究を紹介する前に、日本企業におけるつながり方はどういう傾向があるのかを思い浮かべてください。
旧来の日本企業は、<結束>型のつながりが強く、<橋渡し>型のつながりが不足していたと言われています。
それは終身雇用制度で転職することが珍しかったり、ものづくりの職人気質が強かったりなど様々な理由が挙げられます。しかし一方で、<橋渡し>型のつながりが少なかったため、日本企業ではイノベーションが起きにくかったのかもしれません。
しかし時代は変わり、IT化やグローバル化が進んだことで、組織外への<橋渡し>が比較的簡単につくれるようになりました。
代表的にはSNSなどの登場によって、組織の外の人とつながるハードルは下がり、多様な情報やアイデアを入手できるようになりました。それはとても良いことですが、その反面、組織内の<結束>をつくることが、難しくなってきているのではないかと感じます。その理由には次のような多様な時代の変化が背景にあるかと思います。
組織内の<結束>を作ることが難しくなってきている
- 終身雇用制度の崩壊、副業・複業の解禁による、人材の流動化
- 組織内のダイバーシティ増加による、価値観や文化的背景の違い
- リモートワークやハイブリッドワークによる、対面機会の減少
- 時代や若手世代の価値観の変化に伴う、飲み会や社内イベント等の減少
- パワハラ・モラハラ対策に伴う、過剰なコミュニケーション回避
しかしながら、「だから昔はよかった」という安易な結論ではありません。
時代に適応してさらに幸福に生きられるように、私たちは新しい働き方を見つけていかなくてはなりません。
次は、視点を長い時間軸に向けて、人生における幸福感の研究を紹介します。
→次へ(⑨幸福で長生きな人生とは?)
【目次】シリーズ「ソーシャルネットワーク研究と職場のハピネス」