④人の「つながり方」が価値を生む(3:結束型)

ソーシャルネットワーク研究と職場のハピネス④

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前回は集団間を橋渡しする構造がイノベーションを生みやすいということを紹介しました。次に、3人が三角形を作る<結束>型のつながりを見てみましょう。

この社会資本のもう一つの構造である<結束>型ですが、こちらがもたらすメリットのほうが一般的に社会資本としてイメージされる場合が多いです。
結束型のつながり方は、基本的に橋渡し型と逆で、A, B, Cの3人が全員つながった三角形の関係になります。

お互いがつながっているので、密な関係になりやすく、そのためこちらは「強いつながり」と呼ばれたりします。

先ほどの<橋渡し>型では情報やアイデアを重視していましたが、<結束>型ネットワークで重視するものは、信頼・規範・相互監視といった特性です。
簡単にいえば、お互いのことを裏切らず、しっかりルールを守って協調的に行動しよう、といった状態です。

<橋渡し>だとAさんは情報的に優位でしたが、<結束>ではBさんとCさんもつながっているのですべて筒抜けになります。なのでお互い隠し事ができず、だったら協力的な関係になったほうがお得だよねと考えます。

信頼・互いに恩義や期待という感情が醸成されやすい
・期待を裏切ったときのコストは双方大きいため、信頼し合う
規範・互いの利害関係を守るための暗黙の行動ルールが形成されやすい
・「みんなルールを守るはずだ」と信じて行動する
相互監視・みんなで協力して蓄積した公共財は、みんなのもの
・誰かが独占しないよう互いに監視し、違反者には制裁がある

 
それを、信頼、規範、相互監視という特性によるものだと、研究の世界では理解されてきました。
 
信頼とは、そのままの意味で、信頼関係が生まれ、お互いが裏切らないという期待があることです。
規範とは、互いに利害関係を脅かさないようみんなでルールを守ろう、という暗黙の状態。
相互監視とは、誰かが悪さしないよう互いに監視の目があるため、全員が安心して行動できる状態。
 
これだけだと抽象的なので、次にもう少し具体例を見ていきます。

→次へ(⑤人の「つながり方」が価値を生む(4:集団内の結束))

この記事の執筆者

太田雄貴

(株)ハピネスプラネット

ヒューマンデータ
サイエンティスト

2017年東京工業大学大学院総合理工学研究科博士前期課程修了。同年、(株)日立製作所入社。研究開発グループにて、公共系分野における機械学習や数理最適化の技術を活用した予測・効率化AIシステムの研究開発に従事。2020年に株式会社ハピネスプラネットに創業当初より参画。従業員の生産性・メンタルウェルビーイングの改善に関する実証実験を推進し、それ以外にも新規サービス企画、システム・ソフトウェア開発、アルゴリズム設計、特許出願、講演活動など、多岐にわたる業務に日々奮闘中。趣味は自然を楽しむアウトドア。

辻聡美

(株)ハピネスプラネット

チーフアーキテクト

京都大学大学院情報学研究科博士前期課程了。(株)日立製作所入社後、研究開発グループ基礎研究所にて人間行動データの応用に関する研究に従事し、ウェアラブルセンサを用いた50組織2000名以上の職場コミュニケーションの計測と分析、マネジメント改善施策の実行に携わる。2020年の設立当初より株式会社ハピネスプラネットに参画。発明協会平成26年度関東地方発明賞発明奨励賞、第64回オーム社主催公益財団法人電気科学技術奨励会電気科学技術奨励賞受賞他。趣味は読書と旅行とDIY。

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