⑥イノベーションを生むつながり方はどっち?

ソーシャルネットワーク研究と職場のハピネス⑥

XLineFacebook

前回までに、3人がV字につながる<橋渡し>型、三角形につながる<結束>型のそれぞれの特徴を紹介しました。
では、実際のビジネスの現場ではどちらを優先すべきなのでしょうか?
 
近年のソーシャルネットワーク研究から得られる結論は、どちらもバランスよく保つこと。その代表格となる、ノースウェスタン大学の社会学者ブライアン・ウッツィらの研究を紹介します。

彼らは、ブロードウェイのミュージカル作品を成功へと導く制作チームの特徴を分析しました。各作品のチームにいる制作者同士が、古くからの付き合いなのか、全く新しい関係性なのかに着目。線がつながっている制作者同士は、過去に共同制作の経験があるという意味です。

一番上のチームの場合、線が少ないので、あまり過去に一緒に仕事をしたことのない、斬新なコラボをしたチームです。ほとんどが制作者が初対面なので、持ち寄ったアイデアを組み合わせて革新的な作品が作られる予感がします。
一方で一番下のチームの場合、線が多く、お互いのことをよく知っている顔なじみ同士のチーム。阿吽の呼吸で、効率的に作品制作を進められそうな気がします。
そして真ん中のチームが、両者の中間。新しい人もそこそこいつつ、古くからのメンバーもいるという状態です。

そしてこれらの制作チームが創り上げた作品の結果を評価したものが、右側のグラフです。
一番上のタイプのチームの作品は、作品が失敗する傾向が高くなりました。メンバーの絆が不足しており、アイデアをうまく形にすることができなかったようです。
同様に一番下のタイプのチームも、低評価に終わる傾向でした。こういうチームは外部からの創造的なインプットが欠けていたため、アイデアの焼き直しになりがちでした。

最も成功したチームは、真ん中のタイプのチームでした。彼らの作品は観客たちを楽しませて興行的に成功し、また評論家からの評価も高く芸術的にも成功を収めました。

この研究から言えることは、<橋渡し>が創造性の起点となり、<結束>がそれを形として実現する、ということです。橋渡し型でいろいろなアイデアを組み合わせて想像力を豊かにし、チーム内の信頼関係を活かして実行・実践に移す。この2つが両立していることがイノベーションを生む可能性を高めるのだと考えられます。
→次へ(⑦橋渡し型と結束型の特徴まとめ)

参考文献

  • B. Uzzi & J. Spiro (2005). Collaboration and creativity: The small world problem. American Journal of Sociology, 111(2), 447-504.

この記事の執筆者

太田雄貴

(株)ハピネスプラネット

ヒューマンデータ
サイエンティスト

2017年東京工業大学大学院総合理工学研究科博士前期課程修了。同年、(株)日立製作所入社。研究開発グループにて、公共系分野における機械学習や数理最適化の技術を活用した予測・効率化AIシステムの研究開発に従事。2020年に株式会社ハピネスプラネットに創業当初より参画。従業員の生産性・メンタルウェルビーイングの改善に関する実証実験を推進し、それ以外にも新規サービス企画、システム・ソフトウェア開発、アルゴリズム設計、特許出願、講演活動など、多岐にわたる業務に日々奮闘中。趣味は自然を楽しむアウトドア。

辻聡美

(株)ハピネスプラネット

チーフアーキテクト

京都大学大学院情報学研究科博士前期課程了。(株)日立製作所入社後、研究開発グループ基礎研究所にて人間行動データの応用に関する研究に従事し、ウェアラブルセンサを用いた50組織2000名以上の職場コミュニケーションの計測と分析、マネジメント改善施策の実行に携わる。2020年の設立当初より株式会社ハピネスプラネットに参画。発明協会平成26年度関東地方発明賞発明奨励賞、第64回オーム社主催公益財団法人電気科学技術奨励会電気科学技術奨励賞受賞他。趣味は読書と旅行とDIY。

こちらの記事もおすすめです