日立ハピネスプラネット

企業経営に、ハピネス・マネジメントを。

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食と健康の領域で、様々な製品・サービスを社会に届ける味の素ヘルシーサプライ㈱。 味の素ヘルシーサプライ㈱様にはリーダー研修と並行してHappiness Planet Gymを2か月間、ご利用いただきました。

今回、味の素ヘルシーサプライ㈱の代表取締役社長の甲谷様に、就任時からの課題意識や取り組み、Happiness Planet Gymの導入などについてお話していただき、弊社・ハピネスプラネット社の代表取締役社長である矢野が聞き手として対談する企画が実現しました。

組織内の関係性、つながりの重要性を事業・組織運営に活かすお二方の対談です。
ぜひご覧ください。

 

「強くて良い会社」を目指した社長就任時

 

-甲谷さんは2019年に味の素ヘルシーサプライ㈱の社長に就任されました。その頃の思いや目指したものを教えていただけますか?

 
(甲谷さん)私が就任する少し前から組織風土の改善に努めており、そのまさに真最中に私は就任しました。その時の味の素ヘルシーサプライのスローガンが「良い会社」になるということでした。そのスローガンのもと、人事制度を見直したり、コンプライアンス強化のためにチェック機能を十分にしたりして、少しずつ組織風土が変わってきておりました。
 
そんな時、人事界隈では有名な八木洋介さんに薫陶を受けまして、、。弊社に来てもらってリーダーシップの研修をしていただいた時に、「強くて良いリーダーにならなければならない。良いだけではダメだ」という言葉があって、私を含めた経営陣の心にすごく刺さりました。それからは、リーダーだけではなく会社も、「良い」だけでなく「強い」会社を目指さなければならないと考えるようになり、「良い会社」に「強い」を加えて「強くて良い会社」を目指すというスローガンに変更いたしました。
 
とはいえ「強くて良い」といっても人によって多様な捉え方があるのは事実であり、経営陣の中で「強くて良いとはどういうことか」という議論を積み重ねてイメージを合わせてくる中で、徐々に「強くていい会社」について言語化できるようになってきています。例えば、きちんとしたルールを整備すれば確かに「いい会社」にはなるかもしれないけど、「強い会社」になるためにはやはり一人ひとりが自ら考え自ら動いていかねばならない、という議論であったり、「強い」とは競争に勝つという意味ではなくて、揺らがない軸をもって社会に価値を生み出し続けるということだという考え方が出てきております。また経営陣だけで議論していても十分ではないのでこれから「強くて良い会社とは何か?」という問いを全社に投げかけ、皆で考えイメージを合わせてその実現に向けて力を合わせていこうと思います。

 
 

アミノバイタル®事業で学んだ「人・組織創り」と「価値創り」につながる「暗黙知」の重要性

 

-社長就任から大切にしてきた考えなどはありますか?

 
(甲谷さん)そうですね。ここで、スポーツサプリメントのアミノバイタル®の事業に携わっていた時の話をしたいのですが、社長に就任する前にアミノバイタル®の事業を7年ほどやっていました。アミノバイタル®の事業に着任した際、事業は長年にわたり赤字を継続しておりました。外から見ているととても好調に見える事業だったのですが非常に厳しい状況が続いている事業だったのです。そんな状況のなか私はアミノバイタル®事業に参画したわけですが、長く業績が厳しく苦しい状況であったからこそ組織風土やチームやメンバー間の関係も決していい状況ではありませんでした。そういう状況から仲間と一緒に組織と事業の立て直しに全員で取り組んだのですが、その時に、「人・組織が先で、事業は後」という私の中の原理原則が芽生えたかなと思います。
 
つまり「事業を行う人と組織が最初に良くならないと、絶対に事業は良くならない」という事をこの時に強く実感し自身の強い信念となりました。これは味の素ヘルシーサプライ㈱の社長に就任してからも強く意識し取り組んできており、その中で「強くて良い会社」を目指す為に「人創り→組織創り→価値創り」をど真ん中に据えてやっていくんだという全体像を今年の初めに経営陣とリーダー層の議論を経て整理することができました。(下記参照)
 

 
もう一つ、当時、「どうしてアミノバイタル®は他の味の素の商品のように売れていかないのだろうか?」という問いをずっと考えていました。この問いの答えを模索するために、雨の日も風の日もマラソン大会をはじめとしたスポーツの現場に赴き多くのスポーツを愛する方々と対話をし、彼らの表情や感情を五感で感じる事を積み重ねてきました。そのような積み重ねから、アミノバイタル®を買ってくれる方々は他の味の素商品とは違う捉え方をしているのではないかという結論に達しました。
 
こういう事は多くの販売データ・アンケートや専門家の分析のような表に出てきている形式知からは決して見えてこないものであり、現場での暗黙知を自分たちが共感しながら五感で感じる事で初めて見えてくることだという事に気づくことができました。これらの気づきを活かし新たな価値創りの手法をアミノバイタル®の事業で構築していきました。この経験が後の話にもつながりますが、価値創りにおける言葉になっていない暗黙知の重要性に気づくきっかけでもありました。
 
これらの「人・組織が先で、事業は後」という原理原則と価値創りにおける「暗黙知」の重要性という学びが、味の素ヘルシーサプライ㈱での様々な取り組みにつながっているのだと思っています。
 
(矢野)暗黙知の重要性については私も同意見で、思い出すのは小林秀雄氏の言葉です。それは「直観から分析への道はあるが、分析から直観の道はない」という言葉で、すなわち、最初に直感、あるいは暗黙知があって、それをもとに分析し、形式知に至るのは自然な流れとして起きるが、逆の流れ、すなわち分析だけで形式知をつくり、そこから、直感、あるいは暗黙知に、到達するのは不可能だということなんです。形式知から暗黙知を得るには、行動と経験と時間が必要なんです。
 

 
 

価値創りの手法―「C-Hub」でイノベーションを創出する

 
(甲谷さん)味の素ヘルシーサプライ㈱は味の素㈱100%資本のグループ会社です。(あまり広くは知られてないのですが)味の素㈱はアミノサイエンス®の会社でもありBtoBのアミノ酸の事業を数多く持っています。その様々な事業のなかで味の素側とお客様企業の間に入って窓口になるような役割を担うのが味の素ヘルシーサプライ㈱です。
 
就任して会社の状況やお客様とお会いする機会に触れる中で、味の素㈱の様々な事業に携わり、2000を超えるお客様の企業と繋がりがあるのにも関わらず活かし切れていないのではないかと感じて始めておりました。アミノ酸の可能性そのものもまだまだ十分に引き出せていないということも当然ありますし、多くのお客様だけでなく多くの外部のパートナー企業の皆さんとのつながりを価値創造のために活用しきれていないのではないかということでもありました。また、味の素の外にいるからこそできる事も多いわけで、柔軟に動いてもっと多くのアクションをとってもいいのではないかとも感じておりました。
 
そのような考えを少しずつ言語化していきたどり着いた事が、味の素の様々な製品・サービスと多くの外部のパートナー企業と多様なお客様企業の間で、我々がハブになって新しい組合せ(新結合=イノベーション)をつくっていけば大きな価値を生み出していける、ということでした。味の素の様々な製品をお客様企業に、右から左に移すように売るのではなくで、製品やサービスを組み合わせてお客様が本当に求めているもの、かつそれが社会的な価値につながるようなものにしていこう、と。その一連の活動を一言にすると、造語になりますが「Connecting-Hub(コネクティング・ハブ)」、略して「C-Hub」だということです。これを我々の価値づくりの手法として実践していけば味の素ヘルシーサプライ㈱として大きな社会貢献ができると確信しました。
 

 
このC-Hubの活動を実践している社員は既におりましたし、事例もいくつか存在しました。ただ、課題はこのC-Hubを会社全体にどのように浸透させるかということで、どうしていこうかという議論を積み重ねる中でたどり着いたのが、知識創造理論を考案した野中郁次郎先生の「SECIモデル(セキモデル)」に当てはめてみることでした。
 
これは、多くのメンバーが持っている暗黙知をまず共同化・言語化して「形式知」にする。次に、それらの形式知をつなぎあわせたものを各個人に内在化していき「暗黙知」にする。そして、これを何度も繰り返すというプロセスです。当時、このSECIモデルの教えを乞うために、野中先生の研究室に直接連絡すると快く会ってくれて、本当に多くの学びをさせていただきました。私はそれ以前から『知識創造企業』の著書で感銘を受けて、野中先生の大ファンだったので、アイドルに会いに行くような気分で研究室を訪れましたよ(笑)。
現在、このC-HubをSECIモデルに則りながら、会社全体に実装するために奮闘している最中です。ようやく実装のための一歩を踏み出したという感じですかね。今後、数年の間に効果が表れてくれると嬉しいと思っています。
 
(矢野)野中先生のSECIモデルについては、モノづくりを中心とする日本企業の多くで誤解されていることが多いと感じます。その原因は多くの人が、「形式知の方が暗黙知より良いもの」と捉え、「暗黙知を形式知にすることが良いこと」と捉えていているからではないかと思います。確かに、暗黙知を形式知にすることは大事なのですが、それ以上に、暗黙知自身を高めることがより重要で、それが知を創造していくことの真ん中にあるというのが野中理論の神髄と考えています。
 

 
 

組織を超えたつながりをつくるためにHappiness Planet Gymを導入

 
 

-今回、TRMという管理職昇格候補者の研修でHappiness Planet Gymを利用いただいた経緯を教えていただけますか?

これまで話してきたように、味の素ヘルシーサプライ㈱は事業を通じて多様な業種の企業と関係があるのにも関わらず、それを新たなイノベーションにつなげられていないという課題を持っていましたが、それは会社内でも同様の課題がありました。つまり、事業所や部門ごとの縦割りです。例えば、弊社の複数の部門がAという会社とお取引しているにも関わらず、弊社内ではA社についてほとんど連携を取っていないという事例もありました。私の立場であれば、複数の部門を俯瞰して見ているので「なんで連携を取っていないのか?」「連携すれば大きなチャンスがあるのに」と思っていました。
 
また、ちょうどこの頃経営陣の中でダニエル・キム氏の「成功循環モデル」のフレームワークについて関心が高まっておりました。このモデルは、組織はまず「関係の質」がベースにあって、それが「思考の質」になり、「行動の質」になり、最後に「結果の質」として現れていくという考え方で、それが循環するという考えから成り立っています。(「結果の質」から入ると失敗循環モデルになるとも言われております。)私たちの組織内においてもいろいろな場面で「関係の質」を上げるのがまず取り組むべきことだろうと考えたわけです。
 
そのような背景があり、事業所や部門をまたぐような形で選出される管理職候補者の育成プログラムのTRMでHappiness Planet Gymを活用し組織の壁を越えたコミュニケーションを促進させるという狙いで導入しました。Happiness Planet Gym導入の他にも、組織をまたぐコミュニケーションの機会は増やしていますが、やはりHappiness Planet Gymのようなアプリを一つのテコにして進めていくのは、昔ではできなかったのである意味、今どきの極めて効果的なやり方だと思っています。
TRM期間1年のうちの最初の2か月間、Happiness Planet Gymを利用させてもらいましたが、利用者のアンケートをみても、「他事業所、他部門の方とこんなにコミュニケーションを取れていなかったことに気づいた」というようなコメントがあり、私も含めて会社として矢野さんの仰る「三角形のつながり」の重要性を再認識しています。
 
(矢野)そうですね。三角形のつながりの1つの効能は、自分が知っている「リアルな一次情報」が増えるということですよね。例えば、営業部門のなかで、開発部門の人とつながりがあるAさんとつながりがないBさんがいたとして、Aさんは「開発部門のCさんはこう言っている、Dさんはこう言っている」というような深い洞察から意思決定できますが、Bさんに関しては「開発部門はこう言っている」というような粒度の粗い推測から意思決定しないといけない。その差は非常に大きな差となって仕事の成果に表れると思います。
 


 
 

遠心力に勝る求心力を

 

-今後、どのような会社にしていきたいとお考えですか?

 
そうですね。昨今、会社に対する「遠心力」が時代を経るにつれて強まっていると思います。転職市場の活発化や働き方改革、副業の拡大などもその要因ですし、ジョブ型雇用に代表されるような「就社から就職」という価値観も影響していると思います。つまり、その気になれば今の会社をやめれるような環境が整っていると。だから、そのような状況だからこそ、会社がやるべきことは社員にこの会社で働く意味を提供して「求心力」を高めるということだと考えています。そのための方策はこの数年、色々やってきました。
 

 
まずは、人事制度。弊社は味の素グループの会社なので、人事施策もどうしても味の素㈱を横目に見る形で親会社に合わせて整備してしまいがちですが、そうではなく、味の素ヘルシーサプライ㈱が「強くて良い会社」になる為に必要で、かつ社会の最先端の人事施策にしようということで動いています。一人一人の背景や価値観が違うからこそ、それぞれの事情に応じて住む場所や働き方などの施策を選択できるような仕組みの導入や、BtoBの会社だからこそ価値を生む現場で自走できるような仕組みの導入などを検討しています。
 
また、成功循環モデルにおける「関係性の質」という視点でみると、会社全体における社員と経営の信頼関係は全てのスタートであるし、また求心力という意味でもすごく重要だと考えていたので、今年の9月から全社の月次会議と月2回の執行役員会は全社員に向けてオープンにしています。これまでは資料すら開示していなかったのですが、今はオンラインで誰でも会議に参加することもできますし、意見があればだれでもチャットにも打ち込んでいいという状態にしています。導入について議論している際にはリスクもあるのではないかという意見も出ましたが、「我々がまず社員を信頼しよう」という事で決断をいたしました。そうすると、社員の皆さんから「経営陣はこのようなことまで議論してくれていたんだ」というコメントもあり、社員と経営の関係性の質の向上につながっているのではないかと思っています。
 
あとは、理念の浸透ですね。社長就任時、会社には当然、理念というものが存在していましたが、「額に入れて飾る」に近い状況で、「三番目のレンガ職人」のように社員が本当に腹落ちして日々の活動に取り組んでいるとは言えない状態でした。そのような状況を改善するため、昨年から「活かすぜ!アミノ酸」というスローガンで、私たちの事業活動の目指すもの・志を掲げています。味の素ヘルシーサプライ㈱で働く意味を再認識することによって求心力を高めたいと考えています。
これらの取り組みの結果として、遠心力に勝る求心力がある会社をつくっていければと思っています。
 

-本日はありがとうございました。

 

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