睡眠の質を向上させる食事の秘訣

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「最近、よく眠れていますか?」

仕事や生活に追われ、睡眠の質が低下していると感じる方も多いのではないでしょうか。睡眠不足は仕事のパフォーマンスを低下させるだけでなく、健康にも悪影響を及ぼすことが知られています。

これまで、睡眠と食事の関係についてはさまざまな研究が行われてきました。しかし、多くの研究では食事や睡眠を自己申告ベースで記録する方法が用いられており、記憶の曖昧さによるバイアスが問題視されていました。

ところが、近年のスマートフォンアプリの進化により、日々の生活データをより正確に記録できるようになりました。今回ご紹介する研究では、「Pokémon Sleep」と「あすけん」という2つのアプリを活用し、リアルワールドでの食事と睡眠の関係を調査しています。スマートフォンアプリを使ったユニークなアプローチにより、これまで関連が見えにくかった「食事が睡眠に与える影響」をより明確に捉えることが可能になりました。

出典

  • Seol, J., Iwagami, M., Kayamare, M. C. T., & Yanagisawa, M. (2025). Relationship Among Macronutrients, Dietary Components, and Objective Sleep Variables Measured by Smartphone Apps: Real-World Cross-Sectional Study. Journal of medical Internet research, 27, e64749. https://doi.org/10.2196/64749

スマートフォンアプリを活用した研究手法とは?

筑波大学の研究チームは、Pokémon Sleep(睡眠記録アプリ)とあすけん(食事管理アプリ)のユーザーから収集したデータを分析し、食事と睡眠の関係を調査しました。

① Pokémon Sleep:ゲーム感覚で睡眠を記録

Pokémon Sleepは、スマートフォンを枕元に置くだけで、総睡眠時間(TST)、入眠までの時間(SL)、睡眠中の覚醒率(%WASO) などの睡眠データを自動記録するアプリです。一般的な睡眠トラッカーと異なり、ポケモンを育てるゲーム要素が取り入れられているため、ユーザーが継続的に睡眠を記録しやすいという特長があります。

💡 ポイント

  • 睡眠データはスマートフォンの加速度センサーを活用して計測
  • ゲーム要素があるため、モチベーションが続きやすい

② あすけん:AIによる食事記録

あすけんは、ユーザーが摂取した食事の栄養素を詳細に記録できるアプリ です。食品を検索して選ぶだけでなく、バーコードスキャン機能もあり、手軽に正確なデータを入力できます。

💡 ポイント

  • 栄養データは日本食品標準成分表を元に自動計算
  • AIが食事内容を分析し、アドバイスを提供

研究結果:食事が睡眠の質に与える影響

研究では、4825人のユーザーのデータを分析し、以下のような興味深い結果が得られました。

1. タンパク質を多く摂ると睡眠時間が長くなる

  • タンパク質の摂取量が多い人ほど、総睡眠時間(TST)が長い 傾向が見られました。
  • 特に、タンパク質摂取量が最も多いグループは、最も少ないグループと比べて 約0.27時間(16分) 長く眠っていました。

2. 脂質の種類が睡眠の質に影響を与える

  • 飽和脂肪酸(一部の動物性脂肪や加工食品)を多く摂ると、入眠時間が長くなり、睡眠の中断が増える。
  • 一方、多価不飽和脂肪酸(DHA・EPAなどの魚由来の脂質)は、入眠をスムーズにし、睡眠の中断を減らす。

3. 食物繊維の摂取が良質な睡眠をサポート

  • 食物繊維の摂取量が多い人ほど、総睡眠時間が長く、入眠までの時間が短くなりました。
  • これは腸内環境が改善され、セロトニンやメラトニン(睡眠ホルモン)の生成が促されるためと考えられます。

4. ナトリウムとカリウムのバランスが重要

  • ナトリウム(塩分)が多い食事は、睡眠時間を短くし、覚醒率を高める。
  • 一方、カリウムの摂取が多いと、入眠時間が短くなる傾向がある。
出典:Adobe Stock

スマホアプリ活用のメリットと今後の可能性

従来の研究では、食事や睡眠のデータを自己申告で記録する方法 が一般的でした。しかし、この手法には「記憶の曖昧さ」や「記録の手間による継続の難しさ」という問題がありました。

本研究のように、スマートフォンアプリを活用することで、より正確かつ大規模なデータを収集できるメリット があります。

📱 スマホアプリ活用のメリット

  1. リアルタイムでデータを記録できる → 記憶の曖昧さを排除
  2. ユーザーが継続しやすい → ゲーム要素やAIのアドバイスがモチベーションを維持
  3. 大規模なデータを収集可能 → 研究の精度が向上

さらに、将来的には、個人の食事や睡眠データを分析し、AIが最適なアドバイスを提供するヘルスケアシステム の開発も期待されます。

まとめ:アプリを活用して、睡眠の質を向上させよう!

今回の研究から、スマートフォンアプリを活用することで、食事と睡眠の関係をより正確に把握できる ことが分かりました。特に、タンパク質や食物繊維の摂取を増やし、脂質の種類に注意することで、より良い睡眠を得られる可能性が高まります。

忙しい毎日を送るビジネスパーソンにとって、「良質な睡眠」は仕事のパフォーマンス向上に直結します。スマホアプリを上手に活用しながら、健康的な食事と睡眠習慣を取り入れてみてはいかがでしょうか?

この記事の執筆者

村井康太郎

(株)ハピネスプラネット

カスタマーサクセスアーキテクト

新卒でPwCコンサルティング合同会社に入社後、人事コンサルティング部門にて大手メーカーやサービス企業の人事業務改革やグローバル人事システム、ピープルアナリティクス導入プロジェクトに従事。2021年より株式会社ハピネスプラネットに参画。カスタマーサクセスの改善の他、システムやサービスの開発に奮闘中。趣味は読書とトライアスロン。

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