あなたにとって仕事は楽しいものですか?
子供の頃にひたすら積み木でお城を作ったり、サッカーをしたりしたときのように、夢中になって仕事ができたらどんなに幸せだろうーそう思ったことのある人は少なくないのではないかと思います。
今回はポジティブ心理学の中でも特に有名なチクセントミハイの「フロー理論」を紹介します。
フロー(flow)とは“流されている”というニュアンスで、日本語ではピンと来づらいのですが、何かに没頭していて他のことや時間すら気にならなくなるような状態を、チクセントミハイは流されている状態をイメージして「フロー状態」と名付けました。
参考文献
- M.チクセントミハイ『フロー体験とグッドビジネス 仕事と生きがい』世界思想社教学社
(原文)Good Business – Leadership, Flow, and the Making of Meaning –
このフロー状態は仕事中にも現れます。没頭するという経験を通して人の可能性は大きく引き出されて成長し、組織の生産性やクリエイティビティにもおおいに関連することが実証されています。
フロー状態はどういう状態に起きるのか、以下の条件が挙げられています。
- 目標が明確である(もしくはその取り組みそのものが目的である)
- 迅速なフィードバックが得られている
- 現在のみに集中している
- 難易度とスキルがバランスを取れている
今回は特に4番について詳しく見てみましょう。
模式図としてはこのように表現されます。
横軸がスキル発揮の度合い、縦軸が難易度です。
実はテレビゲームもこの原則に沿って作られているんです。
初心者のうちは簡単な課題を提示し、習熟してくるにつれて難しくなるように作られています。だから誰もが夢中になってしまうんですね。
しかし、大人に小学生向けの算数パズルをやらせても「退屈」に感じてしまいますし、慣れていない人に難易度の高いリズムゲームをやらせても「不安」に感じ、すぐにあきらめてしまうでしょう。
つまり、この両軸がちょうどいいバランスを取れている領域が「フロー状態」なのです。
フロー状態では自分の能力のギリギリ限界でクリアできるかどうかというチャレンジングな課題に取り組むときに起きやすいのです。
子供が遊びに夢中になっているのは、「こんな風にボールを蹴りたい」「もっと高く積み木を積みたい」と本人のスキルより少し高い課題にチャレンジしている証拠なのです。
みなさんはどのような仕事のときにフロー状態になっているでしょうか?
『グッドビジネス』の書籍では、インタビューに基づき多数のプロフェッショナルが仕事中にフロー状態を体験していることも多く紹介されています。
会社のハンドルを握る経営者、読書するビジネスマン、実験中の科学者、手術中の外科医、演奏中のバイオリニスト、自然を観察する農業従事者などあらゆる仕事の中にフローの機会はあるのです
フロー状態は何より「楽しい」ものとして体験されます。
フローになる条件には他にもありますが、その仕事であなたの力を発揮できているか、ワクワクするほどの難易度があるかをまず振り返ってみてください。
仕事を楽しいと思える時間をもっと増やせるかもしれません。
また引き続き、
- フロー状態と成長のプロセス
- フロー状態になるための方法、考え方
- フロー状態と生産性、創造性の関係
- フロー状態の調査方法
- 職場のフローを増やすためのリーダーシップのあり方
などについて、このコラムで考えていきたいと思います。