夢中な時こそ人は成長する

フロー理論②

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人はどのような時に成長するのでしょうか?

私たちは勉強や習い事の経験から、苦痛に耐えなければ成長できないと考えがちです。

しかし、人は楽しんでいるときにこそ急成長していると書籍『グッドビジネス』においてチクセントミハイは述べているのです。

フロー状態とは、目の前のタスクに夢中になっている状態、それ自体がとても楽しくワクワクして時間を忘れるほど集中している状態です。

この瞬間こそ人の潜在能力が引き出され、もっとも成長するタイミングなのです。

出典:Amazon.co.jp

参考文献

  • M.チクセントミハイ『フロー体験とグッドビジネス 仕事と生きがい』世界思想社教学社
    (原文)Good Business – Leadership, Flow, and the Making of Meaning –

フロー状態について、前回難易度とスキルのバランスで説明しました。

出典:『グッドビジネス』に基づきHappiness Planet社作成

横軸がスキル発揮の度合い、縦軸が難易度です。これが釣り合っている状態つまり右上がりの対角線上にあるときがフロー状態です。

(図A)ある物事、例としてピアノの練習に取り組むとき、始めは誰でも初心者です。指1本で音を鳴らして楽しむでしょう。

(図B)次第に上達してくるとそれだけでは物足りなくなってきます。これが「退屈」な状態です。そこで難易度を上げ、両手を使って弾く曲にチャレンジすることを選択します。

(図C)苦戦しつつ難しい曲の練習に取り組んでいると次第にそれに夢中になってきます(「フロー」の状態)。この、難易度とスキルが拮抗し、失敗と成功を繰り返して試行錯誤している状態が一番楽しく、そして急成長する機会なのです

(図D)そしてまたスキルが上がると同じ曲では物足りなくなり、さらに難易度の高い曲(E)に挑戦していくのです。

ここで、(B)や(D)のようなフローの少し下の「退屈」ゾーンでは実力よりも低い難易度の課題なので余裕をもって楽しむことができます。ただし成長はここで停滞するので、さらに難易度の高い曲に挑戦するか、このままの難易度で気ままに弾き続けるかを選択する必要があります。

このように(A)~(E)の意思決定を繰り返して人は段階的に成長していくというのがこのモデルです。

多くのアスリートはスキルが上がってもそれに満足せず、さらに次のチャレンジを求めていきます。それは、フロー状態そのものがとても楽しいからなのです。

大人にとって、仕事は学ぶ機会と能力を最大限に発揮する機会を得られる絶好の場所です。しかしそうでなければ仕事は疎外感と無気力の原因にもなってしまいます。

井深大が1946年にソニーを立ち上げたときの設立趣意書には次のように書かれています。

‥‥‥コレハ技術者達ニ技術スル事ニ深イ喜ビヲ感ジ、ソノ社会的使命ヲ自覚シテ思イキリ働ケル安定シタ職場ヲコシラエルノガ第一ノ目的デアッタ。‥‥‥

これを見たチクセントミハイは、”社会の必要性に応えながら喜びをもって思いきり働くことはフローが職場で機能する方法を完璧に表現している”と評しています。

従業員が仕事を最高に楽しめること、それこそが最も潜在能力を引き出し、会社の成長の根源になるものなのです。

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