都市の中でストレスを減らす方法――「ネイチャーピル」の効果とは?

「ネイチャーピル」の効果とは?

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忙しい日々を送る中で、ストレスを感じることは避けられません。しかし、そのストレスを手軽に和らげる方法があるとしたらどうでしょうか?
最新の研究によると、自然の中で過ごすこと(ネイチャーピル) が、私たちのストレスを軽減するのに効果的であることが分かっています。特に高層オフィスで働いている人や都市部に住んでいる人にとっては、身近な公園や緑地を活用することで、健康面でのメリットが得られる可能性があるのです。

今回の記事では、米ミシガン大学の研究チームによる「都市環境における自然体験とストレス軽減」の研究を紹介しながら、どのくらいの時間自然の中で過ごせばストレスが減るのか? という疑問について解説していきます。

出典

  • Hunter, M. R., Gillespie, B. W., & Chen, S. Y. (2019). Urban Nature Experiences Reduce Stress in the Context of Daily Life Based on Salivary Biomarkers. Frontiers in psychology, 10, 722. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2019.00722

研究概要:ストレス軽減に最適な「自然時間」は何分?

この研究では、36人の都市部在住者 を対象に、8週間の間、週に3回以上10分以上の「自然体験(Nature Experience, NE)」を行うよう指示しました。
研究では、ストレスホルモンとして知られる コルチゾール と、ストレス反応に関与する アミラーゼ を唾液サンプルを用いて測定し、自然体験の前後でどのように変化するかを分析しました。

その結果、以下のことが分かりました。

  1. 自然体験をすると、コルチゾールの減少が通常より21.3%早く進む。
    → つまり、自然の中にいることで、ストレスホルモンの低下が加速する。
  2. 最も効果的な自然体験の時間は「20~30分」。
    → この時間帯でストレス軽減効果が最も大きく、それ以上長くいても効果は増えるが緩やかになる。
  3. 激しい運動はストレス軽減効果を弱める可能性がある。
    → 低強度の活動(座る、ゆっくり歩く)をしているときの方が、ストレスホルモンの低下が大きかった。

具体的な結果:どれくらいの時間が効果的?

研究の結果、「20〜30分」 の自然体験が、最も効率よくストレスを減らすことが分かりました。

  • 10分以下 の場合、ほとんど変化なし
  • 15~20分 でも一定の効果はあるが、やや低め
  • 20~30分 で最も効率的にストレスが軽減
  • 30分以上 でも効果は続くが、減少速度は鈍化

これらの結果から、「最低20分は自然の中で過ごすこと」がストレス軽減に最適であると言えます。

なぜ自然がストレスを減らすのか?

では、なぜ自然の中にいるとストレスが軽減されるのでしょうか?
研究者たちは、以下の要因が影響していると考えています。

  1. 視覚・聴覚・嗅覚を通じたリラックス効果
    → 緑を見ること、鳥のさえずりを聞くこと、草木の香りを感じることが、脳のリラックス反応を引き出す。
  2. 人工的な刺激からの解放
    → オフィスや街中では常に多くの情報を処理しているが、自然の中ではその負担が軽減される。
  3. 副交感神経の活性化
    → 自然の中にいることで、リラックスを司る副交感神経が優位になり、ストレスホルモンの減少が促される。

都市部で「ネイチャーピル」を活用するには?

では、都市部に住んでいる私たちは、どのようにしてこの「ネイチャーピル」を取り入れることができるのでしょうか?

1. 公園や緑地を活用する

 オフィスの近くや自宅の周辺にある公園や緑地を、積極的に活用しましょう。
 通勤途中に寄ったり、ランチタイムに少し歩いてみるのも効果的です。

2. ベランダや屋上で緑を楽しむ

 公園に行く時間が取れない場合は、自宅のベランダやオフィスの屋上 で、観葉植物を眺めたり、植物を育てるのもおすすめです。

出典:Adobe Stock

3. 週末は「自然リセット」デーを作る

 週末に30分~1時間程度、河川敷・森林公園・海辺などに行く習慣を作る のもおすすめ。
 リラックス効果を高めるために、スマホをオフにして自然に集中するとさらに効果的です。

4. 自然の音を活用する

 どうしても外に出られない日は、「自然音」 を活用してみましょう。
 例えば、森林の音や波の音を流しながら仕事をすると、リラックス効果を得やすくなります。

まとめ:毎日の暮らしに「自然の時間」を

この研究から分かることは、「都市部に住んでいても、短時間でも自然と触れ合うことでストレスを減らせる」ということです。

  • 1日20〜30分の自然体験 で、ストレスホルモンを効果的に低減
  • 激しい運動ではなく、ゆったり過ごすことが大事
  • 公園・ベランダ・自然音など、都市でも実践可能

毎日のちょっとした工夫で、心身の健康を整える「ネイチャーピル」。
ぜひ、今日から試してみてはいかがでしょうか?

余談になりますが、実は筆者自身も、自然に囲まれた環境で働いています。
弊社のオフィスがある日立中央研究所には豊かな緑が広がり、ランチタイムに少し外に出るだけで、リフレッシュできるのが魅力です。

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この記事の執筆者

村井康太郎

(株)ハピネスプラネット

カスタマーサクセスアーキテクト

新卒でPwCコンサルティング合同会社に入社後、人事コンサルティング部門にて大手メーカーやサービス企業の人事業務改革やグローバル人事システム、ピープルアナリティクス導入プロジェクトに従事。2021年より株式会社ハピネスプラネットに参画。カスタマーサクセスの改善の他、システムやサービスの開発に奮闘中。趣味は読書とトライアスロン。

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