幸せなリモートワークのための4箇条 矢野和男

XLineFacebook

コロナウイルスで在宅勤務が広く行われている。
かくいう私も約一月前から在宅勤務の生活である。しかし、そろそろリモートワーク疲れを感じたり、難しさを感じている人も多いのではないだろうか。
リモートワークの中でも幸せになるための条件がある。それを紹介したい。

我々は、大量のデータを使って、幸せで生産的な集団に普遍的に見られる特徴をデータを使って解析してきた。その結果、幸せな集団や職場には、下記の4つの特徴があることが分かった。

(1) つながっている人数が互いに平等
(2) 5分間会話が頻繁に行われている
(3) 会話の際には、発言権が平等である
(4) 相手への身体の同調が多い

即ち、幸せな集団では、いろいろな人と人の組合せで、5分程度の短い相談や質問や雑談が頻繁に生じており、そして、面会の際は遠慮せず皆が発言しあい、互いに身体を同調することで信頼や共感を、言葉を越えて確認し合っているのである。

反対に、幸せでない集団では、特定の人が、独占的に多くの人と会話しており、しかも、時間的にも偏っており(例えば毎週1時間の定例会議などのみで、それ以外の日には会話がない)、会議では特定の人のみに発言権が偏っており、メンバーには身体運動を同調させないことで、不信感が言葉を越えて表れているのである。

3密(密接、密集、密閉)を避けるべき、と言われている。しかし、この4つの条件を満たすのに有効なのが3密なのである。幸せになりたいから3密をしたいのである。そして、この3密をしたいという要求は、人類が互いに協力しあうために、進化の過程で獲得した本能的なものである。自然な要求であり、あらがいにくいものなのである。

この大量のデータが示しているのは、3密を避ける現状の生活を続けると、必然的に、ストレスが増え、抑うつ傾向やうつ病のリスクが増えるということである。そして、さらに、ストレスや幸福感の低下は、免疫力の低下にも直結するので、ウイルスとの戦いにも不利になるという悪循環が懸念される。

だからこそ、我々は意識的に工夫する必要がある。仮に制約があってもできることはあるからである。

ここでこの4箇条は、この工夫のための有効な指針となる。よく考えると、この4つとも、リモートワークの中でも実現可能である。それを意識して行うかどうかにかかっている。

おそらくリモートワークでも上司と部下の会話は行われているであろう。しかし、それだけではだめである。部下と部下のいろいろな組合せで、5分程度の短い相談や確認や雑談が合った方がよい。しかも、遠慮せずに発言しあうことである。これにより、(1)(2)(3)を実現できる。このことをマネジャーがメンバーに推奨し、職場のメンバーが認識し、日々実行するだけでも大きな変化が期待できる。

そして、テレビ会議や電話でも、相手を想像して、身体を同調することである。電話での会話で「うなづく」ことをおかしいと思うかもしれない。とんでもない。それこそが、相手を想像し、身体を同調させるという幸せの重要な条件(4)である。大いに行うべきである。

さらに、この4つの特徴は、身体に特徴的な動きを伴い、この動きの特徴をセンサを使って捉えると、幸せな集団かどうかが定量化できる(これをハピネス関係度と呼んでいる)。スマホのアプリで測れる(名前はHappiness Planet)。私のチームでは、この数値をモニタリングし、より幸せな職場にする取り組みを行っている。

ウイルスとの戦いは、始まったばかりであり、長期戦が予想される。
敵をよく知り、効果的な戦い方をしなければいけない。
免疫力を高めるのに効果的なのが、幸せになることである。
リモートワークの中で、幸せになるための上記の4箇条を
意識することで、ウイルスとの戦いにも勝利したいものだ。

https://comemo.nikkei.com/n/ne77dfc8ba81b

この記事の執筆者

矢野和男

(株)ハピネスプラネット

CEO兼株式会社日立製作所フェロー

1959年山形県酒田市生まれ。1984年早稲田大学物理修士卒。大量のデータから幸福度を定量化し向上する技術の開発を行い、この事業化のために2020年に株式会社ハピネスプラネットを設立し、代表取締役CEOに就任。詳細はこちら

こちらの記事もおすすめです