あなたの中の“HERO”: 心の資本とは

XLineFacebook

人は企業が持つ最も重要な財産のひとつです。しかしみなさんの組織で働く人は十分にそのポテンシャルを発揮できていると言えるでしょうか?
経営学者のFred Luthans教授らのグループは、成長する組織で働く人は以下の4つの点で自信が高く、それは誰もがすでに持っているものだということを発見しました。

この心の資本(Psychological Capital、略してPsyCap)は、次の頭文字HEROの4つの柱で構成されます。

  • Hope(希望):目標に向けて解決の道を見つける力
  • Efficacy(自己効力感):自分の能力・貢献に対する自信
  • Resilience(レジリエンス):困難があっても乗り越えられるという自信
  • Optimism(楽観性):物事の明るい面を見る前向きさ

これらが高い状態とは、イキイキしていて新しいことに挑戦するエネルギーに満ちている状態であると言えます。
逆にHopeが低いとすぐにあきらめてしまい、Efficacyが低いと遠慮がちに、Resilienceが低いと打たれ弱く、Optimismが低いと悪い予想ばかりしてしまうということです。

これを読んでもしかしたら「今の私はHEROが低いかも・・・」と心配になった方もいるかもしれません。しかしLuthans教授の指摘で興味深い点は、このHEROは人のその時の状態を表しているものであり、状況を変えたり訓練をすることによって誰でも伸ばすことができるものだということです。この点で、生まれ持った性格とは異なる観点であることがわかっていただけるかと思います。
ですから、まず、いまのあなたや職場の周りの人々がHEROが高く、その人のポテンシャルを活かせている状態かを振り返ってみてはいかがでしょうか?

米国における大規模な調査研究において、従業員の心の資本の高さは、企業の生産性や従業員満足度、リーダーシップと相関することが確認されています。上記のHEROが高い職場では、複雑で困難な課題にもあきらめずに工夫を続けられるためと考えられます。

考え方の癖を変え前向きに良いことを見つけることや、小さな挑戦に取り組み成功体験を積み重ねることで心の資本は向上できます。さらにチームでポジティブな協力関係を築けば、他者を頼りやすくなるためHEROの高い状態を維持しやすくなります。

参考文献

  • Fred Luthans, Carolyn M. Youssef-morgan and Bruce J. Avolio, “Psychological Capital and Beyond”, Oxford Univ Press, 2015.
    Fred Luthans, Ph.D
    米国ネブラスカ大学リンカーン校の特別教授(Distinguished Professor)。米国経営学会の前会長であり、現在3つの論文誌の編集者でもある。200本以上の有名な学術論文を執筆。

この記事の執筆者

矢野和男

(株)ハピネスプラネット

CEO兼株式会社日立製作所フェロー

1959年山形県酒田市生まれ。1984年早稲田大学物理修士卒。大量のデータから幸福度を定量化し向上する技術の開発を行い、この事業化のために2020年に株式会社ハピネスプラネットを設立し、代表取締役CEOに就任。詳細はこちら

こちらの記事もおすすめです